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2008年8月 9日 (土)

島崎藤村の「夜明け前」を読んで(2)

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島崎藤村の「夜明け前」の舞台は中仙道・木曽十一宿ひとつ馬籠宿である

その馬籠の本陣・問屋・庄屋を受け持つのが旧家の島崎家

ここを大名、旗本、幕府役人をはじめ多くの旅の人が宿泊し
あるいは昼など小休止したりする

この小説の別の楽しみ方としては
とにかくいろいろな食べ物が登場することである

江戸後期から明治中期あたりまで
山の中、木曽路あたりではどのようなものが食されていたか
興味深いところである

例えば半蔵の父・吉左衛門が友人で馬籠で造り酒屋をしている金兵衛から
誘われての夕食で

「酒のさかな。胡瓜もみに青紫蘇。枝豆。
到来物の畳いわし。
それに茄子の新漬。
飯の時にとろろ汁。すべてお玉の手料理の物で‥

お玉は膳を運んできた。
ほんの有り合わせの手料理ながら、青みのある新しい野菜で膳の上を涼しく見せてある。

やがて酒も始まった‥」

ごちそうというより山や畑でとれた素朴なものである
海のものとして畳いわしが出てくる
少しあぶってつまみにすると酒に合う
簡素ではあるが読んでいるだけで食べてみたくなるなあ

アトリ30羽に茶漬け3杯の話

「アトリ30羽に茶漬け3杯食えば、褒美として別に30派貰える‥
食えなかった時はあべこべに60羽差し出さなければならないという約束だ‥

食い手は、吉左衛門と金兵衛。さて、食った‥
アトリは形も小さく、骨も柔らかく、鶫のような小鳥とは訳が違う‥」

昔もこういった大食い大会的なものがあったのも面白い
アトリって、どんな鳥かな
野鳥自体、現在ではほとんど食わないが、
山間地ではよく鳥網にかかったらしい
なんだか想像しがたいが‥

一度伏見稲荷で雀の串焼きを食べてみたが
これといって美味くはなかったような‥

日常の食生活も登場する

芋焼餅というものがある

「本陣と言っても、吉左衛門の家の生活は質素で、芋焼餅なぞを冬の朝の
代用食とした」
「‥二人で松薪をくべていた。渡し金の上に載せてある芋焼餅も焼きざましに
なった頃だ。おふきはその里芋の子の白くあらわれたやつを温め直して、
大根おろしを添えて、新夫婦に食べさせた。」

芋焼餅というのは今はないのだろうか
観光地で見かける芋を串に刺して焼いているのとは違うのかな
それとも里芋を茹でてつぶして団子状にして焼くのだろうか
一度食べてみたいものだ

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私の大好きな五平餅の記述もある

半蔵がお民という嫁をもらった頃のこと

「炉辺では山家らしい胡桃を割る音がしていた。おふきは二人の下女を相手に、
堅い胡桃の種を割って、御幣餅の支度に取り掛かっていた。‥

おまんは隣家の子息にお民を引き合わせて、串刺しにした御幣餅をその膳に
載せてすすめた。
こんがりと狐色に焼けた胡桃醤油のうまそうなやつは、
新夫婦の膳にも上がった。
吉左衛門夫婦はこの質素な、しかし心の籠った
山家料理で半蔵やお民の前途を祝福した」

「その名の御幣餅にふさわしく、こころもち平たく銭型に造って串刺しにしたのを
一つずつ横にくわえて串をぬくのも、土地のものの食い方である。」

ん、も~お、美味そうでたまらんな~

五平餅も地方によって形がいろいろあるが
岩村、明智、足助あたりは大きな小判型だし恵那、中津川、馬籠などは
みたらし団子状である
塗りつけるタレもその店独特であるが、胡桃や胡麻が入っていると美味いね


今頃の季節、夏の暑い頃は

「酒のさかなには、冷豆腐、薬味、摺り生姜に青紫蘇。
それに胡瓜もみ、茄子の新漬くらいのところで‥」

こんなのは今と同じで100年以上前と変わらんなあ

木曽名物といえば昔も今も蕎麦でしょう、ということで
こんなことが書いてある

「半蔵の家では、おまんの計らいで吉左衛門が老友の金兵衛をも招いて
妻後へ行く児を送る前の晩のわざとのしるしばかりに、新蕎麦で一杯
振舞いたいという。‥

酒は隣家の伏見屋から取り寄せたもの。山家風な手打蕎麦の薬味には
葱、唐からし。皿の上に小鳥。それに蝋茸(ろうじ)のおろしあえ
漬物、赤大根。おまんが自慢の梅酢漬の芋茎(ずいき)

薬味がわざわざ書いてあるところを見るとその地方の特色が出ているのではないか
今じゃ蕎麦の薬味に唐辛子は使わないよね?

本陣には幕府の高官が突然宿泊することがある

「お平には新芋に黄な柚子を添え、椀はしめじ茸と豆腐の露にすることから
いくら山家でも花玉子に蛸ぐらいは皿に盛り、それに木曽名物の鶫の2羽も
焼いて出すことまで‥」

蛸をどうして海から運び保存するのかな
海のものといえば信州松本あたりだと飛騨ブリが日本海から運ばれてきていたが
そういうものはさすがにここまではなかったのかもしれない

飲み物はほとんど「あついお茶」がでるが、ねぶ茶、というものも登場する

「あなたの好きなねぶ茶を入れてきました。あなたは‥」とお民がきいた
ねぶ茶とは山家で手造りにする飲料である」

これは聞いたことも飲んだこともない。今度馬籠に行ったら探してみよう
どんな味や香りがするのかな

こうして書いているときりがないが
とにかく「夜明け前」を読むとお腹がグ~となってくるぞ(笑)

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