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2008年8月 8日 (金)

島崎藤村の「夜明け前」を読んで(1)

連日35度、36度と馬鹿に暑い日が続いている
何をしていなくても体がバテ気味で、居場所がない

かと言って1日中クーラーかけてるわけにはイカンし
とにかく今年はムチャ暑い!

そんな中、島崎藤村の長編小説「夜明け前」を読み終えた

岩波文庫で第1部、第2部、計4冊ある
若い頃少し読んでみたが手に負えなかった

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今回のリベンジは3年前から始まった
仕事で少しばかり木曽路へ出かけたりして
興味が深まりぜひ読んでみたいと思ったのだ

通勤電車の中で少しずつ読んでいたのだが、前回同様に途中で挫折しかけた
やや難解なところがあったからで

それが今年になって第2部を読み始め、この7月末にようやく読了したわけだ


この小説は藤村の父・島崎正樹(小説では青山半蔵)の生涯を描いたもので

時代的には幕末の嘉永年間から明治中期頃までだ

舞台は中仙道・木曽路の馬籠宿だ

「木曽路はすべて山の中である」の書き出しは有名である

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読みすすめていくとまるで映画を観ているようであった
あの馬籠宿、十曲峠、恵那山などの四季がカラーでよみがえってくるのだ

数年前に中津川から落合宿、石畳の十曲峠、芭蕉碑がある新茶屋、新町を抜け
馬籠宿まで歩いたことがある

別の日には馬籠から峠を通って大妻籠、橋場、妻籠へ出て南木曽まで歩いた

この体験があったので小説がより面白くリアルに私の体で理解できたところもある

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それに
西美濃地方に住む私にとっては中山道という一本の道で繋がっており、
遠い東の山の中でのデキゴトとは思われず、ず~と親近感があるのだ

西からの動きは京、近江、大垣へと順に伝わっていったから
波が押し寄せるような、風が吹き抜けていくようなさまざまな動き

車も鉄道もなかった時代、人は歩くか、船に乗るかしか移動手段はなかった

山の中とはいえ、中仙道の宿場・馬籠の本陣には多くの情報が入ってきたのだ

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特に維新前後にはさまざまな人々が西へあるいは東へと
動きが非常に活発だった

まさに「風雲急を告げる」日々だった
江戸の幕府の要人から、あるいは京都の天皇側近・勤皇派からの動向が伝わってくる

皇女和宮、水戸天狗党、赤報隊、東山道総督府など
ものものしい集団が通り抜けていく

中仙道の街道筋にあたる西美濃地方でも大騒ぎだった

馬籠宿の本陣という定点に身を置き
その対応に追われ苦渋しながらも
先行きどうなるのかという不安
一方でわずかな希望を半蔵はもったのだが

あれほど望んだ新しい夜明けは結局来なかったのだ

失望の中、自宅の座敷牢で狂乱死する

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悲惨な結末に
読み終わってみると
大きなため息と
やりきれなさが残った

やりたいことがあっても、本陣・庄屋の勤めがあるので
勝手に抜け出せば、家族はどうなる、
そうして悶々とした日々を送るのだ

人生ってそんなもんかもしれんな、とも思うし
自分に置き換えてみると複雑な思いがする

藤村は、晩年にこの長編小説を書くことによって父を理解し
また己を知ることで
人の持つ不条理を越えることができたのかもしれない

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坂本龍馬、勝海州、福沢諭吉など幕末から維新にかけ活躍し
今日の日本をつくった有名人の偉人伝は多い

しかし、山間の僻地で、
半蔵のような名もなき人の生涯については
ほとんど埋もれて消えてしまう
それが普通だろう

作家・藤村により鮮やかに生き返らせ、私たちに大きな感動を与えた

何を考えどう生きたのか

膨大な資料をもとに綿密に当時の社会状況、生活、経済、
取り巻く風景や空気を
具体的に鮮やかに描きあげた描写力は素晴らしいと思う

時代を取り巻く状況が克明に書かれ、多少難解なところもあるが
それによって当時の人が懸命に生きているのが理解できるのだ

半蔵はこう言った
「わたしは、おてんとうさまも見ずに死ぬ」

死に物狂いに生き
正直で真っすぐであったがために
人一倍挫折感が大きかったのだろう

明治19年半蔵没、享年56歳

まさに私自身が半蔵になって、今、人生を終えたような奇妙な安堵感があった



                           (2)につづく

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