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2007年6月30日 (土)

1090回めの土佐源氏

坂本長利の一人芝居「土佐源氏」を観た
この芝居については前から評判を知っていたが
なかなか出会うチャンスがなかった

今回は
府中市郷土の森博物館開館20周年・宮本常一生誕100年記念特別展
に合せた企画のひとつとして公演されるものだ

事前にはがきで申し込み多数の場合は抽選になるらしい
やきもきして待っていたら10日前にやっと届いて「当選おめでとう」だ
やはり人気が高い

公演は23日に1回、24日に2回の3回公演
各回100人だから300人のみがOKさ

23日は夕方17時30分から開演
会場は博物館内にある旧田中家住宅和室だ



Img_0338
博物館では今回の特別展にそうとう力を入れているようだ

園内では、あじさいまつりも開かれている

Img_0307
今回の公演会場となる旧田中家住宅は
甲州街道・府中宿を代表する商家で
明治天皇行在所にもあてられていた
移築された土蔵や表門がなかなか立派である

Img_0308

入り口に看板があった

Img_0334
まだ1時間もあるのに受付は並んでいる
お客も入れ込んでいるぞ
期待が高い

2000円の参加費を支払って靴を脱ぎ会場に入る

10畳程の和室が3つ
襖をはずして縦長の通しの間になっている
その中央に黒い布で覆われた2畳ほどの高くなった舞台がつくられ
その上に15センチほどの太いローソクが一本おかれているのみ
背後は黒い暗幕である

座布団が敷き詰められこれが観客席だ
最前席は舞台からわずか畳一畳分離れているだけ
ほとんどかぶりつき状態

早くも前の特等席は埋まっている
2番目に陣取った
一人で着た赤いTシャツの若者
府中市の中年女性ふたり連れ
演劇好きらしい男
宮本ファン
混在の観客
年齢層も幅がひろい
観てみたい、という一点では共通している

開演時間が迫ってくるとどんどん人が増えて
それによって部屋の温度が上がってくる
観客の熱気も加わる

お互い同士の会話を聞いていると
どうやら宮本常一の企画展の関係者もいるようだ
周防大島からの人もいる

開演のあいさつがあり部屋の電気が消される
そしてローソクに火が入る
Img200506221

会場を静寂が包む
音がしてくる
どうやら太鼓のようだ

その音が観客を徐々に特別な世界に誘いこんでいく

風のうなり声にかわり、暗闇から何かが現れた
モゾモゾという音にハーハー、ゼイゼイという息づかい

ござで体全体を包み隠し、のそりのそりと近づいて
舞台の中央に現れた奇妙な人物

ドキリとする瞬間だ


「わしの話を聞きたいとおっしゃるのか
わしゃ、何もしらんぞ」

ポツリポツリと口が開き
少しずつ戸惑うように話し始める

遠い昔を懐かしく、あるいはため息まじりに

ご存知「土佐源氏」は宮本常一の名著「忘れられた日本人」の
なかで取り上げられた聞き取り話のひとつだ

土佐榛原で暮らす盲目の老人の話

牛を売り買いするばくろうの女遍歴を語るというもので
芝居はおおむねこれにそって展開していく

一人芝居も始めて観たし
坂本の芝居も始めてだった

トツトツと語る場面や大きく身振りする、あるいは
話し疲れてゴロンと横に寝てしまう

また起き出して
「あ、あの時はそうじゃった…」と次に展開していく構成

時折、観客から笑いも聞かれる

私の予想していたのはもっとどろどろしたものというイメージだった
闇の中で生きる凄さのようなものが底流を流れている
そんなことを想像していた

でも違った
意外に明るいのだ
というより自由奔放に生きた男が
盲目となったいま封印を解き自らが解放されるというような印象だ

いろいろ騙しもしたが牛と女は騙さなかった
庶民のずるさとしたたかさ

「かかあがもうじき戻ってくるでな、
 おなごのはなしはここらでやめよう」

吹き荒れる風にござを飛ばされそうになって舞台から消えていく

ながい余韻があった

舞台が明るくなって俳優・坂本長利が登場する
拍手が起きる
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演じられた男はどこに消えたのか
ここにはダンディな男・坂本がいる

あいさつが始まる
「きょうは1090回目の公演です
みなさんが呼んでいただきこれまで続けられることができました」

大きな拍手

「諸外国にもいろいろ公演いたしました
日本語でセリフを全部言うんですが、笑うところは同じなんですね
どうして分かるんでしょうか
不思議です
日本語って素晴らしいと思います」
などユーモアをまじえたあいさつ

40年もライフワークとして演じ続けた味がにじみ出ていた
今年77歳で多分生涯演じていくだろうと思う

私としても恐らくもう二度と観る機会はないだろう

宮本常一の世界をこうした形で伝え遺されている

見ごたえのあるお芝居を堪能しました


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